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数年後の大転換に向けて

ゲーム業界は他の業界と同じく、コンテンツ産業全体の生態系転換の中に巻き込まれると、以前より指摘してきました。そろそろそのタイミングに来ていると考えますので、産業全体に言及しながら今後の見通しにつき述べます。

コンテンツ産業は、作品化・商品化・マーケティングの3つの機能で構成されます。マーケティングにはプロモーション、ディストリビューション、マネタイゼーションが含まれます。例えば音楽であれば、作曲し演奏するのが作品化、収録しCDに焼き付けるのが商品化、店頭で販売するのがマーケティングです。ゲーム業界でいえば、我々の開発するアセットの実体はプログラムであって、このままでは販売できません。従って、我々が作品化した後、商品化のプロセスが必要になります。ゲームソフトという高度なアプリケーションが動作するゲーム機を製造、販売し、プログラムをDVDに焼き付けてパッケージにします。これが商品化で、ゲーム機メーカーがその機能を果たしました。パッケージソフトを店頭で販売するのがマーケティングです。どの業界でも基本構造は同じです。 コンテンツは無形なため、ビジネスにするためには商品化、すなわちメディア化が必須で、メディアの種類によってマーケティングが決まっていました。コンテンツ産業では、商品化によって業界が分かれており、商品化の付加価値が最も高かったのです。

この構造が、ネットワーク化、デジタル化により、最初の変質を迎えます。 メディアがネットワークになったことに伴い、特殊な環境を用意しなくともコンテンツが享受できるようになったため、商品化の価値が下がりました。また、複製自在というデジタルの特性ゆえに、コンテンツがネット上に氾濫します。ネットユーザーが提供するブログ等がこれに加わり、情報、コンテンツが供給過多になったので、いかにこれを整理するかという機能に価値が生まれました。機能としてはマーケティングの範疇です。この時期の文化を象徴する言葉が、フリー、シェアです。ネット上では、情報、コンテンツの価値が激しく下落していき、作品化、商品化を担う業者の生存が困難になりました。また、マーケティング機能を担っているネット業者も、顧客囲い込みに鎬を削りながら、自らが招いた無料化によって収益機会が限られ、結果として、各機能のバランスが崩れ、コンテンツ産業は生態系の危機を迎えました。今世紀に入ってからの検索時代は、一将功成りて万骨枯る状況だったのです。興味深いことに、この間生き残ったコンテンツ業界は、ゲームや日本の携帯電話サービスといった垂直統合モデルを採用しているところだけでした。

ところがAppleの登場で、第二の転換が起こります。 彼等は、ことごとく前時代の逆を選択しました。水平統合に対して垂直統合モデル、ブラウザに対してネイティブアプリ、フリーに対してプレミアム。ネットユーザーは、それまでの環境に対して、利便性が高い上に無料ではあるものの、雑然とし安全ではないと感じていたのか、iPhoneに殺到します。Appleは、顧客を完全にロックインすることに成功しました。解が見つけられないでいたIT事業者はこの成功を見て、次々に垂直統合モデルに鞍替えしていきます。iPhoneという物理的端末と、iTunes Storeというネット上のマーケティング・プラットフォームの組み合わせが、この垂直統合モデルの原型です。Google、Amazon、Microsoftが次々に端末製作に名乗りをあげ、Facebookですら参入しそうな様相です。目下の主戦場はタブレットPC。ネット上の覇権争いのために物理的端末の競争に突入するという逆説です。 この状況は、作品化を担う我々のような業者にとっては、コンテンツが基本無料から有料に変わるということなので朗報です。他方、多端末への対応が必須となり、開発作業は非効率になります。

それでは、その次に何が起こるでしょうか。 HTML5とクラウド・コンピューティングの二大イノベーションが、再度生態系を大転換するとみています。これらによって端末の差別化が困難となり、囲い込み競争を行っているIT事業者は目先の武器を失います。Apple型の垂直統合モデルは成立しなくなるでしょう。 ゲームは、お客様がゲームに関わることで楽しんでいただく双方向のコンテンツですから、他のコンテンツと異なり、本来複製自在とはいきません。加えて、ゲームにオンライン要素が実装されるようになったことにより、我々とお客様との関係は一時的ではなく継続的なものとなりました。現時点でお客様と我々との間に存在するのは、マーケティング機能を担う業者だけになっております。このマーケティング機能を独占する者の解体を促すのが、これらイノベーションであると考えています。我々は、開闢以来初めて、直接お客様と結びつくことができるようになるのです。

現在進行している戦略は、現状の利益を確保するためだけでなく、来るべき時代に向けての準備でもあります。現状の維持拡大と、次代の飛躍という二兎を追いたいと考えております。

今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。

代表取締役社長

和田 洋一

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