2011年11月25日 中央大学 講演概要
「ゲーム産業の業態変化」

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閑話休憩ところでという話なんですけども…(スライド18)

先ほどのソニーさんの例、持続的イノベーションを瞬時にして達成しましたというところですが、これは、日本型のイノベーションとは何かについての格好のケーススタディだと思うんですよね。 それで雑談めいて脇にそれますと。僕は、イノベーションは化学反応だと思っています。必要な要素を、最適な環境に置く事で産まれる。イノベーションをどう管理するかという観点で言えば、いかに自覚的に行うかという事になりますが、少なくとも、必要素材が何か、特定できるか、調達できるか、組み合わせの変更等、試行錯誤ができるか否かがポイントになります。日本のカイシャがそこそこ強かったのは、材料調達について、極めて優れたシステムを持っていたからだと私は総括しています。

お金に関しては間接金融中心でしたよね。割とどっかにいつもポケットがありました。それから資本コストがすごく安かった。それから人。人はですね、終身雇用だと窮屈という風に思いますよね。ところが終身雇用って実は宗教で、終身雇用してもらえるという風に従業員側が思っていると、実は何ができるかというと今だったら考えられないことが昔できてたんです。あなたは1週間後にフィンランドでデザイナーをやりなさいと言えた。僕、経理で採られたと思ってたんですけど…。何言ってるんだ会社に就職したら一生会社に捧げるんだと。人の異動というのは会社間では硬直的なんです。ただ会社あるいはグループ会社の中だと自由自在だったんですよね。配置転換の経営の自由度は尋常じゃなかったんです。終身雇用の悪いところばかり言われてますけども、従業員側だけからでなく、企業側からいいとこってあったんです。結果、最適な組み合わせが作りやすいので大きな企業とか企業コングラマリットの中では社内ベンチャーがバンバン立ち上がって新しい事業がおきたんです。更に、今みたいにコーポレートガバナンスなんていう面倒くさい話はないので、実質的にガバナンスがきいてないというか…取締役会独裁ですよね。不透明といえば不透明。だけど極めて迅速な意思決定ができたんです。今みたいにエビデンスをこれだけ残しなさい、これだけのプロセスを踏んだんですかとかないんです。はい、決めました。終わり。悪いこともおきましたが、中小企業並みに判断が速かったんです、数万人の企業も。昔の大企業、終身雇用制、持合い…社内ベンチャーのためには最大最良の温室だったんですね。ソニーコンピュータもそうですよ。ソニーって大企業ですよね、素晴らしいブランドもある。でも、ゲーム作りたいと思ってソニーに入った人なんて誰もいなわけですよ、なんせゲーム産業がなかったんだから。ビートルズに憧れてソニー・ミュージックに入った人が、明日からテレビゲームの開発者を口説いてこい、と言われるんです。家電製造ノウハウがある者達は、明日からゲーム機を設計すべし。僕は盛田さんを尊敬して入社しましたって人に対しても、あぁ丁度いい、任天堂のビジネスモデルをパクって、プレイステーション・モデル作ってね、なんて言ってのける。財務担当には、少し足の長い資金が必要だからよろしく。こんな事を一瞬にやってしまうんです。各分野の凄く優秀な人達を瞬時に糾合できる。これが日本のカイシャの凄いところだったんです。この中には起業する人も出てくるかもしれません。でもやってみたら分かるんですけど、こんな事不可能ですよ。志同じくする素晴らしいプログラマーを集めろ。これはできるかもしれない。でも、プログラマーがいてデザイナーがいて、ビジネスプランを作る人がいて、リーガルに漏れのないようにやって、しかもグローバルに展開ができる、こんなの一瞬にして集めるなんて不可能なんですよ。以前の日本の大企業にはできた。わかりやすくする為に、あえて極端な言い方をしていますが、言いたいのは、会社と社会がシステムとして出来上がっており、それがうまく機能していたという事なんです。

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