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ネットワーク化

これまでオンラインゲームの収益の柱であった「ファイナルファンタジーXI」は、引き続き堅調ではありましたが、サービス開始から既に8年経過しています。また、「ファイナルファンタジーXIV」を始め、大型MMORPGの投入は2010年度以降になることから、当年度は、大型タイトルに限れば端境期になりました。 しかしながら、新たな試みは着々と実を結び始めております。 今後、ネットにおけるグループ総合窓口に成長させるために、当年度より「スクウェア・エニックス・メンバーズ」を本格的に強化し始めました。全世界の登録会員数も150万人を超え、ようやくスタートラインに立ちました。 また、アバターを中核とするカジュアルポータル・サイトについては、有力分野でありながら従前の当社グループ内の人材からは生まれにくい発想であると考え、2008年2月に別会社を設立しました(100%子会社、(株)スマイルラボ)。その後、専ら外部からのスタッフのみで会社を成長させ、2008年9月にスタートしたコミュニティサイト「ニコッとタウン」は、既に50万IDを超えており、当年度早くも通期で黒字となっております。 さらに、ダウンロード・コンテンツにも注力しており、当年度、ゲームコンソール向けだけでも50以上のタイトルを投入しております。 無論、スマートフォン等の新端末も重視し、例えば、iPhone/iPod touch 向けタイトルでは、「ケイオスリングス」、「スペースインベーダー インフィニティージーン」、「ファイナルファンタジー」がAppStoreの売上ランキングで1位を獲得しております。 その他、ソーシャル・ゲームの開発も着実に進めております。

しかしながら、ネットワーク化の真の衝撃は、上記のようなコンテンツ層においてのみ起こるものではありません。ビジネスの骨格が変質する、つまり生態系が根幹から変わってしまうことこそが本質です。

ネットワーク化によって、市場から産みだされる利益の配分がいかに変わるか。 言い換えればメディアの変更により各業者の利益はどのようになるか。 以前、ゲームソフトのメディアがマスクロムからCDに移った際は、削減されたメディア原価、在庫リスク等は、お客様とソフト業者に還元され、結果としてプラットフォーム・メーカーの利益にも繋がり、業界全体の成長に繋がりました。 今回はどうでしょう。メディアがネットワークになることで削減されたコストはほとんどネットワーク事業者の利益となり、さらにお客様からは削減されたコスト以上の値下げが要求されているのが実情です。 ネットワーク化への対応策を打ち出さなければ、ソフト業者は構造的に利益が享受できなくなります。 しかしながら、いつもピンチとチャンスは裏腹です。 共有インフラを活用すれば、我々でもネットワーク事業者になりうる、プラットフォーム事業者になりうるのです。 我々は、コミュニティのプラットフォーム事業者に変質していくつもりです。 次に、ネットワーク化によって、市場の成長がいかに変わるか? ネットワーク・コンテンツの価格は物理的メディアのものと比較して明らかに下落しております。この意味では市場の縮小要因になりえます。 しかしながら、ネットワークの特性から、地域的拡大、顧客層の深化は、圧倒的です。 さらに、パッケージ・ビジネスと異なり、様々な収益モデルを設計することが可能です。アイテム販売などが、その可能性を示唆する先行事例でしょう。 つまり、ビジネス展開が柔軟で迅速な企業にとっては、大きなチャンスになりえます。

既に賽は投げられています。現実から目を背けることはできません。 ネットワーク化の流れを読み、むしろその激流を活用することが重要であると考えています。

さらに別の観点からネットワーク化の重要性を説明します。 お客様にとっての価値がどのように遷移していくかという観点です。 ハードからソフトへとは言い古されたテーマです。 しかし、これがまさに価値の遷移のスタートでした。 ソフトに価値が移った段階で、同じソフトでもその内容が子細に見られるようになります。ソフトは、コードとデータとに分解され、初期ではコードが重要視され、後にはデータに価値が移っていきました。ここまでの流れの一例を示せば、PCからアプリケーションソフトに価値が移り、さらに、アプリケーションである表計算ソフトでも、当初はプログラムが重要であったが、それがコモディティ化すると、アプリケーションにインプットするデータに価値が移っていったということです。さらにデータに価値が移ると、また、その中でも分化が起こります。ゲームの例でいえば、我々が作ったグラフィック等の膨大なデータ(既製データ)よりもお客様のプレイデータ(ユーザーデータ)が重要になっていきます。アジア圏を中心に、ゲーム本体を無料で配信し、アイテム販売で収益化するというモデルが産まれています。これは上記の一例と捉えることもできます。さらに一歩進めば、一人のデータよりもコミュニティのデータが価値を持っていくことでしょう。

この遷移の後半のドライバーになるのがネットワークインフラです。 bitは、コストなく完全複製できるという特性から破壊的な伝播力を持ちました。 しかしながら、その特性のために稀少性ゆえの価値を失うことになりました。ユーザーデータ、あるいはユーザー間のデータが立ち現れることで、bitは初めて稀少性を獲得するのです。 先ほど、我々はコミュニティのプラットフォーム事業者に変わっていくとご説明しました。 これは、既製データ作成業者から、個人データ、コミュニティデータ管理運営業者に変態を遂げるという意味です。

■図8: 価値の遷移

価値の遷移

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