IR情報

2022年3月期 株主の皆様へ

今後の事業戦略について
スタジオポートフォリオの見直し

2022年5月2日、当社グループにおける一部の海外スタジオ及びIPをEmbracer Group AB(本社:スウェーデン)に売却することを発表いたしました。具体的な売却対象は、Crystal Dynamics、Eidos-Montréal、Square Enix Montréalの3スタジオと関連する事業資産及びIPです。今回の売却は、大規模かつ高度化するゲーム開発において、タイトル及びスタジオのポートフォリオ見直しを通じて、経営資源の選択と集中を実施することで、より強固な事業基盤を構築することを目的としています。

今やゲーム産業は、少子高齢化が進む日本市場を主戦場としていては大きな成長を実現することが困難であり、販売本数・ユーザー数いずれにおいても、より大きなスケールをもたらすグローバル市場で通用するヒットタイトルをいかにして生み出すことができるかが事業の要諦となっています。また、ゲーム開発という側面で見ても、コンソール、スマートデバイスといったハードの種類を問わず、ゲームを楽しむデバイスそのもののスペック向上に連動する形でタイトル開発の大型化及び高度化が進展し、開発投資サイズは、従来とは桁違いに大きくなっています。換言すれば、開発投資を回収し、利益を生み出す収益規模を実現するには、もはや日本市場のみにフォーカスするのでは不十分であり、グローバル市場での成功を前提に開発を行う必要があります。また、お客様のゲーム情報に対するアクセスの利便性も飛躍的に向上しています。SNSを通じた情報は瞬時に拡散し、様々なデバイス、メディアを通じて世界中のお客様が同じゲーム情報を同じタイミングで得ることができる時代となっています。このような環境変化の中で、当社グループがグローバル市場に向けたタイトル開発に今後さらに注力していくためには、限りある経営資源を強固な骨太のタイトル開発に集中させることが必要です。タイトル及びスタジオポートフォリオの見直しを行い、選択と集中を進めることによって、良質なコンテンツを安定的に投入できる体制をいち早く構築し、グローバル市場における当社のプレゼンスをさらに高めなければなりません。

売却対象となった3スタジオは、2009年のEidos買収以来、海外中核スタジオとして当社グループに有形無形の大きな貢献をしてきました。一方で、大型タイトル開発を中心とするそのタイトルポートフォリオは、当社グループ内における経営資源の最適アロケーションを中長期で実現するにあたり、深刻なカニバリゼーションを起こす可能性があります。したがって、経営資源を最適に配分し、より骨太のパイプラインを構築することでさらなる成長を実現するために、今回のスタジオ売却に至りました。新たなパートナーであるEmbracer Group ABのもと、Crystal Dynamics、Eidos-Montréal、Square Enix Montréalのさらなる発展を祈念しています。

スタジオポートフォリオ戦略の第一段として、上記施策を実施いたしましたが、第二段として、下記のようなスタジオにおける資本構成の多様化を検討しております。

スタジオ資本構成の多様化

従来の当社グループにおけるスタジオポートフォリオ戦略の基本は「100%保有戦略」であり、2005年のタイトー買収、2009年のEidos買収もこの路線に沿ったものでした。「100%保有戦略」とは、当社が開発資金を全て負担するため、財務的に100%のリターンを得られる一方で、ダウンサイドに関しても100%のリスクを負うことになります。このような戦略は、ゲームの開発規模が現在ほど大型化する以前においては、当社グループ単独でボラティリティを十分に吸収し、リスクを上回るリターンを獲得することができ、非常に有効でした。しかしながら、開発投資規模の拡大によって、近年、上記の戦略に伴う副作用が看過できないレベルになりつつあります。具体的には、開発投資は将来の当社グループの成長の種である一方で、会計上はコンテンツ制作勘定として認識されることから、これまで以上に財務的なボラティリティとそれに起因した会計的インパクトをいかにマネージするかが重要になっているのです。ボラティリティを適切にコントロールし、成長投資におけるリスクとリターンをどうバランスさせるかが、今後のゲーム事業の経営にとって重要なテーマであり、スタジオ資本構成の多様化が必要であると考える所以です。

スタジオにおける資本構成の多様化とは、「100%保有戦略」に固執せず、開発リスクをパートナーとシェアする等、資本構成にグラデーションをつけ、当社の負うリスクを低減しつつ、スタジオポートフォリオ全体を成長させるという戦略です。具体的には、100%保有のスタジオのみならず、一部スタジオへの外部資本導入や、当社グループ以外のスタジオに一部資本参加すること等により、スタジオの資本構成に多様性を持たせるということです。その結果、100%保有スタジオから、持分法適用以下のスタジオまで、グラデーションを持ったスタジオポートフォリオを実現してゆくということです。上記戦略のもと、M&A等の手法も取り入れつつ、成長と財務的安定性の両立の実現に努めてまいります。

次に、今後の成長戦略における重要なパートである、ブロックチェーン・エンタテインメント領域についてご説明いたします。


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