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2012年3月期 株主の皆様へ

SNゲームは、お客様同士が繋がることで楽しめる設計になっているもの、つまりソーシャル要素を基礎に作っているものを指しています。現段階ではこれらゲームを携帯電話、スマートフォン、PCで提供しているため、ソーシャルゲームではなくこれら端末で提供されるゲームもこの分類に含めています。開発組織が同質なためです。MMOゲームが全社の底支えとなる安定収益源の役割を担っているのに対して、この組織のミッションは当社収益のアップサイドを可能な限り引き上げることです。 この分野は、顧客層拡大と、ビジネスモデル進化との、双方のフロンティアになっています。不確実な新規分野に対して強固な基盤をつくるためには、短期に密度の濃い経験を積まなければなりません。一点突破の博打も、効率重視の集権化もすべきではないと考えています。我々は、あえて組織を10程度に分割して運営しています。試行錯誤のサイクルを短くすると同時に、小さな組織を並走させることで、グループ全体として多様な経験を早期に蓄積することを狙っています。 当年度はかなり進捗がありました。前年度にローンチしたブラウザゲーム「戦国IXA」は30億円を超える利益貢献を果たし、既に当社の柱のひとつに育ちました。また、年明けにローンチした携帯電話、スマートフォン向けの「FFブリゲイド」はローンチ後1か月以内に登録会員100万人を達成し、3月に200万人を突破するなど、既に2013年3月期の柱のひとつになっています。今後、アジア、欧米への展開も計画しており、さらに発展が期待できます。これらはいずれもF2P(Free To Play)のビジネスモデルです。成功例を複数経験したことから、ゲーム運営にかかるKP(I Key Performance Indicator)の解析能力も向上してきました。一般的には、成功事例が積み上がると、組織を統合し、量産、効率化を志向します。しかしながら、この分野から汲み取るべき知見は非常に豊かだと感じており、まだまだ貪欲に経験を積むべきだと考えております。従って関係スタッフには、プロジェクトを成功させたら、統合ではなく、むしろ分家するように促しています。 上記は日本発の案件になりますが、当年度はこの分野につき、欧米各拠点においてもスタートを切ることができました。いずれも2013年3月期のローンチになりますが、例えば欧州拠点で開発した「Gameglobe」は、お客様自身がゲームを作って作品をシェアし共にプレイするという斬新なデザインであり、しかも、コンソールゲーム並みに高品質であるにも関わらずブラウザで動作するという技術的にも優れた作品で、2012年のE3においても高い評価を受けました。 これらに加えて今後は、中南米圏、アジア圏、東欧圏にも、積極的に進出していく考えです。

HDゲームは、主としてゲーム機用のゲームを指す造語です。当年度は、「デウスエクス」、「FFXIII-2」を日米欧で発売し、実績が上がりました。特に前者は、収益貢献だけではなく、今後の主要IPのひとつとしてデビューできた点で、大きな意味がありました。 さて、昨今この分野は斜陽であるかのように報じられていますが、本当にそうなのでしょうか。ビジネスの枠組みが機能しなくなっているという点ではそのとおりでしょう。しかしながら、このタイプのコンテンツについては、今後ますます進化していくものと考えています。 従来の枠組みは、①ディストリビューションについてはパッケージソフトの店頭売り切り、②主要な端末はゲーム機、③収益認識はディスク販売の一時点のみ、の3つのポイントに集約されます。逆に言えば、この要素を崩していけば問題は解決に向かいます。ディストリビューションについては先行して変化が進んでいます。通信販売に止まらずダウンロード販売が一般的になってきており、さらに、PDLC(Premium DownloadableContent)が主要タイトルに実装されるようになりました。今後、旧来型と新規の比率が逆転していくでしょうが、起こるべき変化はほぼ完了しております。他方、端末については、依然として据置型ゲーム機と他のあらゆる端末とで境界が引かれています。全ての端末で同等のゲーム体験を期待するのは間違っていますが、棲み分けは、端末毎に異なってくるライフシーンで成されるべきです。正しい棲み分けに進化していけば、さらに幅広いお客様がゲームに接するようになるでしょう。最後の収益モデルですが、これが一番立ち遅れています。オンライン上のパブリッシャーはゲーム機メーカーであるため、彼らが方針を変更し、必要な要素を実装しなければ何も変わりません。既にPDLCで部分的に変化が始まっているものの、定額課金すらなかなか許されず、F2Pに至っては否定的な見解のままです。ゲーム機市場の低落傾向の根本原因のひとつはビジネスモデルの立ち遅れであると考えており、非常に残念です。しかしながら、別の観方をすれば、各メーカーが考えを変えるだけで対応が完了するわけですから、一夜にして変化を成し遂げることも可能です。一刻も早い方針転換を期待します。 この分野での我々の戦略は、①ビジネスモデルの転換を前提としてゲームデザインに変更を加える、②お客様との継続的な関係が重要になるので強力なIPを10に絞って育成する、③品質は妥協しない、の3点になります。①を達成するために、MMOゲーム、SNゲームでの知見を積極的に移転させています。部門を超えた発表会を開催するなど情報共有の場を提供するだけでなく、個別タイトルに対して各々ビジネスモデルに関する課題設定を行っています。②についてはこれまでも戦略の柱として申し上げているとおりです。③につき補足します。あまりにもゲーム開発が困難で高コストになってしまったため、業界全体で途方に暮れているのが実情です。2000年代、ゲームエンジンが一世を風靡したのも頷けます。戦略は二者択一です。ひとつは、インディーズでもゲーム開発できる環境が整備されつつあることを積極的に活用する。ただし、カジュアルなゲームが中心になるので大きく利益が出るか否かは不透明、従って固定的リスクは抑える。つまり、会社規模を極小化し、内部に開発スタッフは持たずIP許諾に徹する。もうひとつは、他社が追い付けないところまで走り切るというもの。当社は後者を選択しています。本稿において、アミューズメント事業やMMOゲームの説明個所でも同一の思想が現れていることにお気づきになったと思います。そうである以上、開発環境の整備、進化については、全社的な課題として取り組まなければなりません。ゲームエンジンはその重要な要素です。当社は、外部のゲームエンジンを使用しているだけではなく、既に内製ゲームエンジンを活用しております。今般、それに加え次世代性能を見据えた「Luminous Studio」エンジンの開発に着手しています。2012年のE3でデモの初披露を行いましたが、予想以上に業界の反応が大きく、進路が正しいことを確信することができました。

HDゲームという分類は、ビジネスモデル、提供端末、いずれの観点からもなくなります。これは市場が縮小するということではなく、むしろ逆に現状のコンソールゲームが変質し発展していくという意味です。上記3つの組織分類が不要となり、新たな事業セグメントが提示できる時が、過渡期が終わる時なのだと思います。


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