IR情報

2019年3月期 株主の皆様へ

今後の事業展開について
クラウドゲーミング

現世代ゲームコンソールがその終盤にさしかかり、次世代機が関係者の話題に上るようになってきました。また、Google社の「Stadia」やMicrosoft社の「Project xCloud」など、クラウドゲーミングサービスの発表が大きな話題となっています。また、Apple社の「Apple Arcade」や、Netflix社のゲーム開発の開始など、ゲーム事業への新たな参入が増え、従来のプラットフォーマーとパブリッシャーによるゲーム産業の構図は大きく描き変えられつつあります。

特にクラウドゲーミングについては、従前より、ゲームビジネスの可能性を大きく変えるものといわれながらも、実際には挑戦と失敗の歴史でもありました。今回、5G(第5世代移動通信システム)の普及を見越し、Google社やMicrosoft社などのIT大手企業が参入することで、いよいよクラウドゲーミングが本格的に離陸する可能性が見えてきました。大容量のデータ通信や、大規模なサーバーインフラを必要とするクラウドゲーミングは、大手通信事業者やクラウドサーバー事業者にとって次の新たなビジネスチャンスと映ることは間違いなく、一層の新規参入が期待されます。そういった点からも、今回こそクラウドゲーミングが本格的に立ち上がることを強く期待します。

ゲームパブリッシャー、ゲームディベロッパーにとって、クラウドゲーミングは二つの視点から見ることができます。

第一の視点として、新たなゲームディストリビューション・チャネルとしての捉え方です。既存ゲームや新規ゲームをお客様の手元に届ける手段として、ゲームコンソールやPC、スマートデバイスなどがその役割を担ってきたわけですが、これからは新たにクラウドストリーミングによるゲーム配信がそれに加わります。通信環境やストリーミング技術は日々進化するものであり、いずれは大きな差異を感じなくなる時が到来するであろうものの、プレイ感覚が個々のユーザーの通信環境に大きく依存するクラウドストリーミングによるゲーム配信が直ちに既存ゲームコンソールやPCに置き換わるという可能性は当面は低いと見ざるを得ません。従って、ゲームパブリッシャー視点から見て、ゲームストリーミングサービスに当面大きく期待するところは、既にゲームコンソールやPCで常時ゲームをプレイしているユーザーもさることながら、その外側にいるよりカジュアルなゲームファン、あるいはゲームコンソールなどの入手が困難な地域にいるゲームファンの獲得です。昨今、ゲーム動画の配信が人気を博し、ゲームを実際にプレイしなくともゲームプレイ動画を楽しむゲームファンが世界中に数多くいます。クラウドストリーミングによるゲーム配信によって、即座にかつシームレスにゲームプレイに移行できる環境が整えられれば、そういったカジュアルなファンが実際にゲームをプレイする可能性が高まるでしょう。また、ゲームコンソールが普及していない、あるいは販売されていない地域においても多くのゲームファンが存在します。こういった方々に対してゲームをお届けする手段として、クラウドストリーミングによるゲーム配信は大きな武器になるものと期待しています。グローバルレベルのサービスでなくとも、地域限定のローカルサービスを行う独立系事業者は既にいくつか出現しています。このようなサービス地域の拡大は、私たちゲームパブリッシャーにとって恩恵があることは間違いありません。

第二の視点として、従来型ゲームの配信にとどまらず、クラウドならでは、あるいはクラウドでしか実現できないゲーム体験の可能性です。このようなクラウド・セントリックあるいはクラウド・ネイティブなゲーム開発の動きは既に様々なディベロッパーの中で出てきています。当社グループとしても、現在進めているいくつかの新規ゲーム開発において、このようなクラウド・セントリックな要素を取り入れることを具体的に計画しています。クラウドならではの新しいゲーム体験が提供されれば、いよいよ既存のコンソールゲームプレイヤーやPCゲームプレイヤーにも大きく訴求でき、クラウドゲーミングの普及、地位確立に大きく貢献することが期待できます。

技術的課題に加えて、通信料金などのユーザー負担の問題など、まだまだ解決すべき課題は多いものの、上述のとおり、クラウドゲーミングは大きな可能性を秘めています。当社グループとしては、Google社の「Stadia」に「ファイナルファンタジーXV」「SHADOW OF THE TOMB RAIDER」などの既存タイトルや新規タイトル「Marvel’s Avengers」の投入を既に決定しており、世界的なクラウドゲーミングの本格的立ち上がりに大きく期待しています。


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